2022年5月24日。火曜日。
 天気、五月晴れ。

「古道を歩いてみない? 昔の、鯖街道を」
森林公園くつきの森のEさん、こと海老澤さんからお誘いをいただき、今日は朽木・生杉の「山帰来」へ。

 何気に朝9時集合、とメールに書かれていたのを見落とすところでした。山の中を約40キロほど西へ車を走らせねばなりません。
 今日は、針畑活性化組合の今井さんの案内で、朽木の生杉から、ナベクボ(鍋窪)峠を越え、福井県側のおおい町永谷に続く昔鯖街道として使われた道を歩きます。このルートは、永らく使われていなかったそうですが、昨年、今井さんたちが通れるように整備されたそうです。「昔は、朽木西小の子どもたちが遠足で通っていましたよ」「いま、地域で80歳代以上の方々が子どもだった頃、その親の世代がよく使っていましたよ」というルートとのこと。朽木から若狭へは、このような古いルートが何本も通っていて、人的、物的交流が盛んだったそうです。

 今日は、今井さん、今井さんの知人、くつきの森のスタッフと関係者の皆さん、そして私の8名でチャレンジ。
 最初のブリーフィングもそこそこに、いったん車に乗り込み、若走路(わかそうじ)と呼ばれるところへ。かつて若い衆が走れていた路だったからその名が付いたそうです。
 今日のルートはこんな感じ。国土地理院の地図をお借りして表示してみました。
 途中、地図上には載っていないルートを通りますが、いまはGPSを使った機器でどこを通ったかが分かる時代です。古道好きな方にはたまらないと思います。

 まずは登山口からナベクボ(鍋窪)峠へ。ここは地図に載っている道を上がっていきます。

  30分ほどで峠に到着。ここは、尾根を縦走する「高島トレイル」との交差点。つまり、近江国と若狭国の境目です。坂を上がりきったのでここでちょっと一服して、いよいよ古道ルートに入ります。

 山の斜面に伸びる古道ルートは人ひとりが通れる幅しかなく、斜面の角度によっては崖の上を通る感覚になるような場所や、この冬の雪で倒れた木が道を遮っているような場所も。今井さんのガイドがなければ間違いなく道に迷うようなところでした。そして、所々でみられたのはこのようなクマが樹皮をはがした痕跡。朽木では何度か見かけた光景ですが、何本も続けて剥がされているのを見るのは初めてでした。

「まだしっとりしてる。新しいね」

「新しい…」

「・・・」

 この道に関する資料にあった「一本松」はなかなか確認できませんでした。(最終的には復路で確認) そして、古い道にはよくある、行き交う人の道中の安寧を願うために祀られたであろうお地蔵さん(永谷地蔵)。かわいそうに、ひび割れてバラバラになっていました。一服して、割れたのを元の形に近くなるようなリカバリーを試みたりして、ちょっと急になった斜面を下りて行きます。

 クネクネと急な坂を下りると、沢がありました。そしてこのプレート。以前、このルートを辿った方がいらっしゃったようです。




 車が通れる道が見えてきました。永谷林道です。 

 この林道は、かつて背後の山を越えた先にある京都府・芦生原生林から続く谷合いに揚水発電所ダムを建設する計画が持ち上がった時に作られたものだそうです。発電所を構成するダムが完成した暁には、この地域は水没する予定で、林道を下りて行った先にある永谷(福井県名田庄村。現:おおい町)の集落は1985年に廃村になりました。しかし、当の揚水発電所の計画は頓挫し、無人になった廃村だけが遺されました。
 今日は、本来は集落跡まで行くつもりでしたが、ここに来るまで意外と時間を消費したため、集落跡までは行かずに引き返すことに。集落跡までお迎えの車を手配すると余裕のあるスケジュールが組める、ということでしたが、朽木の生杉から名田庄村の永谷まで車で行くとなると道のりがものすごい距離になりそうです。
徒歩で行くルートを車で行くと




 永谷川沿いの砂防ダムのそばで昼食休憩の後、同じ道を引き返します。ここまで来て今日の日程でもほぼ半分。明るいうちに安全に引き返すには、もう帰らないと大変です。

 

 さっき下ってきた道を上るとやはり息が切れます。けっこうな上りです。皆さん慣れているのかさっそうと進んで行かれます。そして斜面をこんな道で尾根を目指します。
 既に書いてますが、天候が晴れ、なおかつ数日間晴れの日が連続していて、土が乾いていたことは本当にラッキーでした。雨の日や、その後だとぜったい大変なコンディションになっているはず。それにこの後の季節では例のあのヤマビルたちも元気に土の上で踊っていることでしょう。。。

 帰りはスムーズにナベクボ峠まで戻って来られました。ここまでメンバー全員が事故やケガなく戻って来れて本当に良かった(^^)。

 帰っている最中に列の後ろからひとりずつ消息を絶っていたとしても、それに気付かれるのは相当後になってからでしょう。知らんけど。

 あとは車を置いている若走路の駐車場をめざして山を下りるだけ。
 これはトリカブトだそうです。どんな植物かは言うまでもありませんね。だからこそシカにも食べられずこうして残っているわけで。

 16時過ぎに駐車場に全員無事に戻り、解散と相成りました。解散とは言っても、うちに戻るまで、ここからまた40キロほど車で山道を戻らねばなりません。そしてその後で法人の理事会に出るため今津まで行かねば。

 とりあえずケガもせずガケから落ちなかった私に、お疲れさま!
 プチ贅沢なアイスを食べる権利ぐらいあるでしょう。

 今日は、久しぶりに山を越えるような歩き方をして歳を感じましたが、なかなか行けない道を、歴史ある鯖街道の旧いルートを行くことができて楽しかったです。今井さん、海老澤さん、同行していたただいたメンバーの皆さん、ありがとうございました。
 ただ、今回のルート、ちょっとドキドキ感が高かったです。いろいろな意味で。
 今後、当プロジェクトのイベントとしてどうするかは、メンバーの皆さんと話し合ってよく検討していきたいと思います。